保険料が上がるとき、補償を外す前に。「免責金額(自己負担額)」で考える備え方
火災保険などの保険料が上がり、負担を減らそうと補償そのものを外す会社もあります。この記事では、その前に検討したい「免責金額(めんせききんがく=損害のうち自社で負担する額)」の考え方を整理します。
保険料が上がっている背景
損害保険料率算出機構(保険料の目安となる「参考純率」を計算する機関)は、2023年6月、住宅総合保険の参考純率を全国平均で13.0%引き上げると届け出ました。背景には、自然災害による保険金の支払い増加や、修理費の高騰があります。
なお、参考純率は保険料そのものではありません。実際の契約者の保険料の改定率とは異なります。事業用の保険も、保険会社や契約内容によって上がり方はさまざまです。
同機構は、保険料を節約するために水災補償を外す傾向がみられることにも触れています。保険料を下げたい気持ちは自然です。ただ、補償を丸ごと外すと、大きな災害の損失をすべて自社で背負うことになります。
「全部か、ゼロか」ではない選び方
リスクファイナンスの中心は「移転(保険などで損失を外に移す)」と「保有(自社のお金で負担する)」です。免責金額は、この2つを1つの契約の中で組み合わせる仕組みといえます。
免責金額を高めに設定すると、小さな損害は自社で払い、大きな損害は保険で受け止める形になります。一般に保険料は下がりますが、下がり幅は保険会社や契約によって異なります。
注意したいのは、自己負担分を払える手元資金があるかどうかです。契約条件によっては、災害のたびに自己負担が発生します。台風が年に何度も来る地域では、その合計も見ておく必要があります。
建物の補強や浸水対策など、損害そのものを減らす「軽減」は、厳密にはリスクコントロールの領域です。実務では、移転・保有・軽減を組み合わせて考えます。
石垣島などの離島では、台風のたびに小さな修理が重なりがちです。職人や部材を島外から手配すると、費用がかさむこともあります。だからこそ「1回あたりいくらまで自社で払えるか」を、数字で決めておく意味があります。
自社で書き出してみましょう
- 過去5年で、保険金を請求した損害は何件・いくらでしたか。そのうち、自社のお金で払えた額はどれくらいでしたか。
- 1回の災害で、資金繰りを崩さずに自社で払える上限はいくらですか(手元資金の何か月分ですか)。
- 保険料を下げたいとき、「補償を外す」「免責金額を上げる」「保険金額(補償の上限)を見直す」のどれが自社に合いそうですか。
まとめ
保険料の上昇は、補償の中身を見直すきっかけになります。外すか残すかの二択ではなく、「小さな損害は保有、大きな損害は移転」という線引きを、自社の手元資金と照らして考えてみてください。免責金額の選択肢や保険料の差は契約ごとに異なるため、いくつかの条件で見積もりを比べると判断しやすくなります。
参考資料
- 損害保険料率算出機構「火災保険参考純率 改定のご案内」(2023年6月28日)https://www.giroj.or.jp/ratemaking/fire/pdf/202306_announcement.pdf
- 損害保険料率算出機構「火災保険参考純率」https://www.giroj.or.jp/ratemaking/fire/
本記事は一般的な情報提供であり、個別の保険契約・税務判断・資金繰り・投資判断等を助言するものではありません。実際の判断は、自社の状況に応じて、保険会社・保険代理店・保険仲立人・税理士等の専門家にご相談ください。
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