大きな地震のあと、会社を立て直すにはお金が必要です。けれど、ふつうの保険は損害を調べてから支払うため、受け取りまで時間がかかることがあります。この記事では、震度などの数値で支払いが決まる保険の仕組みと、使うときの注意点を整理します。

南海トラフの評価が見直されました

政府の地震調査研究推進本部は2025年9月26日、南海トラフ地震の30年以内の発生確率を見直しました。計算方法によって「60〜90%程度以上」と「20〜50%」の2つの値が出ています。

同本部は、防災では高い方の「60〜90%程度以上」を念頭に行動してほしいとしています。数字が変わったのは計算方法の見直しによるもので、危険が急に高まったわけではない、とも説明されています。

「数値で払う保険」の仕組み

パラメトリック保険(指数型保険)は、震度などの「あらかじめ決めた数値」を満たしたときに、決めておいた金額を支払う保険です。損害の細かい調査(損害査定)を待たないため、早く受け取りやすいのが特長です。

一方で弱点もあります。実際の損害と受け取る金額がずれることです。これを「ベーシスリスク」(数値と実際の被害が一致しないリスク)と呼びます。たとえば、自社の場所の揺れは小さくても、取引先や物流が止まって売上が落ちることがあります。この場合、支払い条件を満たさないこともあります。

なお、商品によっては、数値の条件に加えて損害や費用が出たことを支払いの条件にするものもあります。支払い条件・金額・対象地点は、必ず契約ごとに確認してください。

石垣島など離島では、島の揺れが小さくても、本土の被災で船や飛行機の便が止まり、仕入れが滞ることがあります。「どこの数値で支払われるか」と「自社が困る場面」が合っているかを考えることが大切です。

役割分担で考える

リスクファイナンスの中心は、保険などで損失を外に移す「移転」と、手元資金などで自社が負担する「保有」です。数値で払う保険は、損害を広く補う保険ではなく、「最初の数週間の資金」を早く用意する移転の手段の一つと考えると整理しやすくなります。

建物や設備の損害は、火災保険の地震に関する特約などで備えるのが基本です。ただ、多くの事業用火災保険では、地震による損害は基本の補償に含まれていません。まず今の契約を確認しましょう。そのうえで、足りない部分を手元資金で持つのか、保険で移すのかを組み合わせて考えます。建物の耐震化や固定などで被害を小さくする「軽減」は、厳密にはリスクコントロールの領域ですが、実務では3つをあわせて考えます。

自社で書き出してみましょう

  1. 地震で営業が止まったら、最初の1か月に必要なお金(給与・家賃・仕入れ・返済)はいくらですか。
  2. 今の火災保険で、地震による建物・設備・休業の損害はどこまで補償されますか。
  3. 自社が一番困るのは「自社の揺れ」ですか、それとも「取引先や物流の停止」ですか。

まとめ

数値で払う保険は「早さ」が強みで、「金額のずれ」が弱みです。万能の保険はありません。今の補償と手元資金を確かめ、足りないところにどの手段を当てるかを自社で決めることが、地震への備えの第一歩です。

参考資料

  • 地震調査研究推進本部「南海トラフで発生する地震」(長期評価の一部改訂、2025年9月26日)https://jishin.go.jp/evaluation/long_term_evaluation/subduction_fault/summary_nankai/
  • 大阪管区気象台「南海トラフの地震活動の長期評価(一部改訂)」(2025年9月)https://www.jma-net.go.jp/osaka/jishinkazan/hitokuchi/244_Long-termEvalution-NankaiTrough_202509.pdf
  • スイス・リー コーポレート・ソリューションズ「パラメトリック型ソリューションとは?」https://corporatesolutions.swissre.com/insights/knowledge/what-is-parametric-insurance-jp.html

本記事は一般的な情報提供であり、個別の保険契約・税務判断・資金繰り・投資判断等を助言するものではありません。実際の判断は、自社の状況に応じて、保険会社・保険代理店・保険仲立人・税理士等の専門家にご相談ください。

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