お客様の預かり物を壊したら?「受託者賠償」と手元資金の備え
修理で預かった品物、ホテルで預かったスーツケース、クリーニングの衣類。お客様から物を預かる仕事は、たくさんあります。この記事では、預かり物を壊したりなくしたりしたときに、お金の面でどう備えるかを整理します。
沖縄県によると、2025年度(令和7年度)の入域観光客数は1,093万5,800人で、年度として過去最高でした。島でも、手荷物や自転車、マリン用品を預かる場面は身近です。
預かった会社には、重めの責任がある
商法では、会社などの商人が仕事の中で物を預かると、無料でも「善良な管理者の注意」(その仕事のプロとして当然払うべき注意)で保管する義務があります(商法595条)。
旅館や飲食店、浴場など、お客様が集まる店は、さらに責任が重くなります。預かった物が壊れたりなくなったりしたとき、「不可抗力(防ぎようのない出来事)だった」と証明できなければ、賠償を免れません(商法596条)。一方で、現金や宝石などの高価品は、お客様が種類と価額を伝えて預けた場合でなければ、店は賠償責任を負いません(商法597条)。
ふつうの賠償保険では出ないことがある
店のケガ事故などに備える「施設賠償責任保険」は、自社が使ったり管理したりしている他人の物の損害を、対象外としている契約があります。預かり物はここに入りやすいのです。
そこで使われるのが「受託者賠償責任保険」(預かった物を壊した・汚した・なくしたときの賠償に備える保険)です。ただし、現金・貴金属・美術品、お客様に返したあと時間がたってから見つかった損害などを対象外とする例があります。中身は商品ごとに違うので、約款(契約の細かいルール)で確かめることが大切です。
賠償責任保険が払うのは、会社に法律上の賠償責任があるときです。責任がない場合に「お見舞い」として払うお金は、自社で負担することになります。
リスクファイナンスで考えると、大きな賠償は保険で「移転」し、少額の弁償やお見舞いは手元資金で「保有」する、という分け方になります。預かり票や高価品の申告を求める掲示、保管場所の管理は、損害そのものを減らす「軽減」で、厳密にはリスクコントロールの領域です。実務では、この3つを組み合わせます。
自社で書き出してみましょう
- うちの会社は、お客様の何を、いくらぐらい、何日ぐらい預かっていますか。
- 今の賠償責任保険で、預かり物の損害は対象になっていますか。対象外の物は何ですか。
- 保険が出ない弁償やお見舞いは、1件いくらまでなら手元資金で払えますか。
まとめ
物を預かる仕事は、法律上の責任が重めです。まずは「何を預かっているか」と「今の保険でどこまで出るか」を並べてみてください。保険で移すところと、手元資金で持つところが見えてきます。
参考資料
- 商法 第595条〜第598条(e-Gov法令検索)
- 沖縄県 文化観光スポーツ部 観光政策課「令和7年度 沖縄県入域観光客統計概況(速報)」(2026年4月)
- 社会福祉法人大阪府社会福祉協議会「施設向け賠償責任保険の案内資料」(2026年度。受託者特別約款と「支払われない場合」の例)
本記事は一般的な情報提供であり、個別の保険契約・税務判断・資金繰り・投資判断等を助言するものではありません。実際の判断は、自社の状況に応じて、保険会社・保険代理店・保険仲立人・税理士等の専門家にご相談ください。法律上の責任の有無は個別の事情によるため、必要に応じて弁護士にもご相談ください。
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