台風や火事のあと、「うちの建物は無事なのに、仕事が止まった」ということがあります。原因は、部品や商品を仕入れている会社、または納品先が被害を受けたことです。この記事では、こうした「取引先から波及する休業」への、お金の備え方を整理します。

BCPを作っている中小企業は2割に届かない

帝国データバンクが2026年6月25日に公表した調査によると、BCP(事業継続計画=災害などで事業が止まったときの立て直し計画)を作っている企業は全体で21.4%でした。中小企業に限ると18.3%です。

同じ調査で、BCPの策定意向がある企業が想定するリスクの1位は自然災害(67.8%)でした。「物流の混乱」も36.5%と、前の年より9.0ポイント増えています。自社の被害だけでなく、取引先や物流が止まる場合まで考えておく必要があります。

保険で備えられる範囲と、その条件

休業中の売上減に備える保険(休業損失の補償)は、基本的に「保険の対象(自社の建物や設備など)に損害が出たこと」が条件です。ただ商品によっては、取引先の被害による休業を特約(オプション)で補償するものがあります。

たとえば、ある大手損害保険会社の中小企業向けの総合保険には、「直接仕入先および納品先物件補償特約」があります。この特約の主な条件は次のとおりです。

  • 契約書などで直接の取引が確認できる仕入先・納品先であること
  • その取引先の日本国内の物件に、主契約で補償対象となる事故による損害が出たこと
  • 支払いは事故の日から3日を過ぎた日以降が対象で、限度額は1回300万円

つまり、取引先の物件に損害が出たことが条件です。倒産など、物の損害を伴わない理由で仕入れや納品が止まった場合は、この特約の対象になりません。なお、納品先の倒産で売掛金(後で受け取る代金)を回収できなくなるリスクには、取引信用保険という備えもあります。ただし、仕入先の倒産で商品が入らなくなるリスクとは別ものです。条件や限度額は保険会社・商品ごとに違うので、自社の契約で確かめてください。

リスクファイナンスの中心は、保険などで負担を外に出す「移転」と、手元資金でまかなう「保有」です。仕入先を増やすなどの対策(軽減)は、厳密にはリスクコントロールの領域です。実務では、この3つを組み合わせて考えます。

特約の限度額を超える分や、対象外の停止は、手元資金で支えることになります。石垣島などの離島では、仕入れが特定の船便や島外の取引先に頼りがちです。一つの取引先が止まると影響が大きいので、まず「どこが止まると困るか」を知ることが出発点です。

自社で書き出してみる設問

  1. 止まると1週間以内に自社の売上が止まる仕入先・納品先はどこか。代わりの取引先はあるか。
  2. 今の保険は、取引先の被害による休業を補償するか。補償するなら、限度額と待機日数(支払いが始まるまでの日数)はいくらか。
  3. 保険でカバーできない期間の固定費(人件費・家賃・返済)を、手元資金で何か月分まかなえるか。

まとめ

自社が無事でも、取引先が止まれば売上は止まります。まず止まると困る取引先を書き出し、保険(移転)でどこまで備えられるかを確かめ、残りを手元資金(保有)でどう支えるかを決めておきましょう。

参考資料

  • 帝国データバンク「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2026年)」2026年6月25日公表
  • 東京海上日動火災保険「超ビジネス保険 休業に関する補償(保険の対象と補償範囲/主な特約)」公式サイト(2026年10月閲覧)

※本記事は一般的な情報提供であり、個別の保険契約・税務判断・資金繰り・投資判断等を助言するものではありません。実際の判断は、自社の状況に応じて、保険会社・保険代理店・保険仲立人・税理士等の専門家にご相談ください。

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