社員を海外出張に出す会社へ。現地での病気・ケガ、お金の備えは足りていますか
展示会や商談、視察。小さな会社でも、社員が海外へ出張する機会は増えています。この記事では、出張先で病気やケガをしたとき「どの制度が使えるか」「足りない分をどう備えるか」を整理します。
公的な制度だけでは、全額はまかなえない
外務省の「2025年 海外邦人援護統計」(2026年5月公表)によると、在外公館などが対応した日本人の援護件数は12,239件でした。前の年(11,864件)より増えています。
仕事と関係ない病気やケガなら、健康保険の「海外療養費」が使えます。ただし支給額の基準は「同じ治療を日本で受けたらいくらか」です。そこから自己負担分を差し引くので、海外で払った額より大幅に少なくなることがあります。申請は、支払った翌日から2年以内です(協会けんぽの案内より)。
仕事が原因のケガなら、労災保険の出番です。ここで大事なのが「出張」と「派遣」の違いです。
「出張」と「派遣」で、労災の扱いが変わる
厚生労働省の「特別加入制度のしおり(海外派遣者用)」では、次のように分けています。
- 海外出張者:働く場所が海外なだけで、日本の事業場に所属し、日本の上司の指示で働く人。日本の労災保険の対象です。
- 海外派遣者:海外の事業場に所属し、現地の指示で働く人。日本の労災保険で守られるには「特別加入」(本来対象外の人が任意で入る仕組み)の手続きが必要です。
どちらに当たるかは、期間の長さだけでなく、所属や指示を出す人など働き方の実態で判断されます。長めの滞在を「出張」のつもりで送り出していないか、一度確かめておくと安心です。
保険に任せる分と、手元資金で持つ分
リスクファイナンスの中心は、保険などで他に任せる「移転」と、手元資金で自ら持つ「保有」です。公的制度で足りない治療費や、家族の駆けつけ費用、現地での賠償などは、会社で入る海外旅行保険で移転する方法があります。補償の範囲や金額は商品ごとに違うので、契約内容を確かめてください。
保険金が届くまでの立て替えや、補償の対象外になる費用は、手元資金で持つことになります。外貨で払う費用は、為替しだいで円での負担が変わる点にも注意が必要です。なお、渡航先の安全情報の確認などは、事故を起こりにくくする「軽減」で、厳密にはリスクコントロールの領域です。実務では、移転・保有・軽減を組み合わせます。
石垣島のような離島から出張する場合、乗り継ぎが多く、帰りの便が乱れると滞在が延びがちです。その分の費用も、見込んでおきたいところです。
自社で書き出してみる3つの問い
- この1年で、誰が、どの国へ、どのくらいの期間出張しましたか。「派遣」に近い働き方の人はいませんか。
- 出張のとき、どの保険(会社契約・個人契約・カード付帯など)で、いくらまで補償されていますか。
- 現地で治療費を立て替えることになったら、いくらまで会社の手元資金で払えますか。
まとめ
海外での病気やケガは、公的な制度だけでは全額をまかなえないことがあります。まず「出張か派遣か」を確かめ、公的制度・保険・手元資金のどこで受け止めるかを分けて考える。この順番で、自社に合った備えを考えてみてください。
参考資料
- 外務省 領事局「2025年(令和7年)海外邦人援護統計」(2026年5月)
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)「海外療養費」
- 厚生労働省「特別加入制度のしおり(海外派遣者用)」(2026年10月閲覧)
本記事は一般的な情報提供であり、個別の保険契約・税務判断・資金繰り・投資判断等を助言するものではありません。実際の判断は、自社の状況に応じて、保険会社・保険代理店・保険仲立人・税理士等の専門家にご相談ください。労災保険の適用や特別加入の手続きについては、労働基準監督署や社会保険労務士にもご相談ください。
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