社内で生成AIを使い始めた会社へ。誤り・情報漏えいで損害が出たときのお金の備え
メールの下書きやチラシの文章、見積もりのたたき台。生成AI(文章や画像を自動で作るAI)を仕事に使う会社が増えています。この記事では、AIの使い方で損害が出たとき「誰がお金を払うのか」「保険でどこまで守れるのか」を整理します。
AIの法律ができても、損害の責任は会社に残る
2025年5月にAI推進法(人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律)が成立し、同年9月1日に全面施行されました。2025年12月23日に初の「人工知能基本計画」が閣議決定され、2026年7月14日には第Ⅱ期の計画に改定されています。
ただ、この法律はAIの活用を後押しする法律で、罰則は設けられていません(国による調査や指導・助言などの仕組みはあります)。AIの誤りで取引先に損害を与えたとき、責任を負うのは、AIを使って仕事をした会社自身になりえます。
総務省の令和8年版情報通信白書でも、日本企業が生成AIで心配するリスクとして多く挙がったのは「社内情報の漏えい」「出力の精度(間違い)」「著作権などの権利侵害」でした。
「移転」と「保有」で分けて考える
リスクファイナンスの中心は、保険などで他に任せる「移転」と、手元資金で自ら持つ「保有」です。まず、今入っている賠償責任保険やサイバー保険が、AIがからむ損害を対象にしているかを確認します。対象かどうかは、契約の約款(保険のルールブック)や特約しだいです。
海外では、保険から外す動きもあります。米国で保険の標準的な約款を作る機関(Verisk)は、生成AIが原因の損害を一般賠償責任保険から除外できる任意の追加条項を届け出ており、2026年1月1日を予定発効日としていました。実際に採用・適用されるかは、保険会社や州などによって異なります。「入っているから大丈夫」とは限らない、ということです。
保険で守れない部分は、手元資金で持つことになります。なお、入力ルールづくりや人によるチェックは、損害を起こりにくくする「軽減」で、厳密にはリスクコントロール(事故を減らす工夫)の領域です。実務では、移転・保有・軽減を組み合わせます。
石垣島のような離島の小さな会社ほど、少人数でAIに頼る場面が増えがちです。島の外の取引先との仕事が多いなら、なおさら一度確かめておきたいところです。
自社で書き出してみる3つの問い
- 社内の誰が、どの仕事で、どのAIを使っていますか(取引先に出す書類に使っていますか)。
- 今の賠償責任保険・サイバー保険の約款で、AIがからむ損害は対象ですか。対象外の条件はありますか。
- 保険で守れない損害が出たとき、いくらまでなら手元資金で払えますか。
まとめ
AIは便利な道具ですが、損害の責任まで引き受けてはくれません。使っている場面を書き出し、保険の対象を確かめ、残りを手元資金で持てるかを考える。この順番で、自社に合った備えを考えてみてください。
参考資料
- 内閣府「AI法 全面施行 -次なるフェーズへ-」(2025年10月)
- 人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(2025年5月28日成立、6月4日公布、9月1日全面施行)
- 内閣府「人工知能基本計画(第Ⅱ期)」(2026年7月14日閣議決定)/初回計画(2025年12月23日閣議決定)
- 総務省「令和8年版 情報通信白書」生成AIの業務利用状況・懸念されるリスク
- Verisk(ISO)一般賠償責任保険の生成AI除外条項(予定発効日2026年1月1日の任意条項・multistate filing)
本記事は一般的な情報提供であり、個別の保険契約・税務判断・資金繰り・投資判断等を助言するものではありません。実際の判断は、自社の状況に応じて、保険会社・保険代理店・保険仲立人・税理士等の専門家にご相談ください。AIの利用に伴う法的責任については、弁護士にもご相談ください。
自社の保険がAIがからむ損害を対象にしているか確かめたい方は、リスクファイナンス研究所の初回相談をご利用ください。