アプリで単発の働き手を頼む「スポットワーク(スキマバイト)」。人手不足の現場では、もう欠かせない存在です。ただ、1日だけの仕事でも、会社は「雇い主」としての責任を負います。この記事では、受け入れる会社が見落としやすいお金のリスクと、その備え方を整理します。

応募の時点で「雇った」ことになりうる

厚生労働省は2025年7月4日、スポットワークの注意点をまとめたリーフレットを公表しました。面接なしの先着順で決まる求人では、別の取り決めがない限り、一般に「応募した時点」で労働契約が成立すると考えられる、としています。

つまり、労働契約が成立した後に、会社の都合で当日の仕事をなくしたり、早めに帰したりすると、休業手当(会社都合で休ませたときに払うお金。平均賃金の6割以上)が必要になります。また、会社都合で仕事を直前にキャンセルすることは一般的に不適切とされ、その有効性は契約内容など個別の事情によって判断されます。

ケガも事故も、受け入れた会社の問題になる

働き手が仕事中や通勤中にケガをした場合、労災保険(仕事のケガを補償する国の保険)は、受け入れた会社の事業の保険から給付されます。保険料も会社の負担です。初めての人に機械の扱い方などを教える安全教育も、会社の義務とされています。

また、働き手がお客さまにケガをさせたり、物を壊したりした場合、会社が使用者責任(従業員が仕事中に与えた損害を会社も負う責任)を問われることがあります。アプリの運営会社が独自の補償を用意している場合もありますが、対象や上限は各社の規約しだいです。

お金の備えは「移転」と「保有」で

リスクファイナンスの中心は、保険で外に出す「移転」と、手元資金で受け止める「保有」です。たとえば、自社の賠償責任保険が「単発の働き手が起こした事故」も対象にしているかは、契約の書き方によって違います。保険会社や代理店に確認しておくと安心です。

一方、休業手当や急な追加募集の費用は、一般には保険ではなく手元資金で受け止める部分です。なお、安全教育や作業手順の整備は、事故そのものを減らす「リスクコントロール」の領域です。実務では、この3つを組み合わせて備えます。

観光の繁忙期や、人を集めにくい離島では、スポットワークに頼る場面がこれから増えるはずです。だからこそ、使う前に「何かあったら誰が払うか」を決めておくことが大切です。

自社で書き出してみる3つの問い

  1. 自社で「募集を取り消す・早く帰す」可能性があるのは、どんな日・どんな場面でしょうか。
  2. 今の賠償責任保険は、単発の働き手が起こした事故も対象になっていますか。確認した人はいますか。
  3. 初めて来た人に、最初の10分で必ず伝える安全ルールは何でしょうか。

まとめ

スポットワークは便利ですが、1日だけでも雇用です。キャンセルの費用は「保有」、事故の賠償は「移転」と、払い方を先に決めておく。それが、人手不足の時代に安心して人を頼むための足場になります。

参考資料

  • 厚生労働省「いわゆる『スポットワーク』の留意事項等をまとめたリーフレットを作成しました」(2025年7月4日)https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_59197.html
  • 厚生労働省 使用者向けリーフレット「『知らない』では済まされない『スポットワーク』の労務管理」https://www.mhlw.go.jp/content/11202000/001512368.pdf
  • 労働基準法 第26条(休業手当)
  • 民法 第715条(使用者等の責任)

本記事は一般的な情報提供であり、個別の保険契約・税務判断・資金繰り・投資判断等を助言するものではありません。実際の判断は、自社の状況に応じて、保険会社・保険代理店・保険仲立人・税理士等の専門家にご相談ください。労務の個別判断は、社会保険労務士・弁護士等にもご相談ください。

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