赤字の年は、手元のお金がいちばん細くなる年です。そんなとき、前の年に納めた法人税の一部を返してもらえる仕組みがあります。「欠損金(けっそんきん=税金計算上の赤字)の繰戻し還付」です。この記事では、使える会社の条件と、災害時の特例、見落としやすい点を整理します。

どんな仕組み?誰が使える?

今期が赤字になったとき、その赤字を「前の期」に持ち戻して、前の期の法人税を計算し直す仕組みです。払い過ぎた形になった分が還付(かんぷ=税務署から返金)されます。返ってくるのは、おおむね「前期の法人税額 ×(今期の税務上の赤字 ÷ 前期の所得)」で、前期に納めた法人税額が上限です。

国税庁によると、大きな会社はこの制度を原則として使えません(令和10年3月31日までに終わる事業年度について停止中)。一方、資本金1億円以下の会社など「中小企業者等」は使えます。ただし、資本金5億円以上の大法人に100%保有されている子会社などは除かれます。

  • 前期から今期まで続けて青色申告(帳簿をきちんとつける届出をした申告)をしていること
  • 今期の確定申告書を期限内に出し、同時に還付請求書を出すこと

申告期限を過ぎると、原則としてこの還付は使えません。また、戻るのは国の法人税です。県や市町村に払う住民税・事業税は、この仕組みで同じように戻るわけではありません(法人住民税には、還付を受けた額を後の年の計算で差し引く仕組みがあります)。

台風・地震など災害のときの特例

災害で商品や設備などが壊れ、一定の「災害損失欠損金額」が生じた場合には特例があります。対象は、資産の滅失・損壊や原状回復の費用、被害の拡大や発生を防ぐための費用などで、保険金などで補われる部分は除かれます。休業による売上の減少そのものは含まれません。この特例は大きな会社も使え、青色申告なら前2年までさかのぼれます。災害から6か月以内の期間について、仮決算(かりけっさん=期の途中で締めた決算)の中間申告で請求する道もあります。台風の通り道にある石垣島や沖縄・離島の会社にとって、知っておきたい選択肢です。

リスクファイナンスの中心は、保険などで損失を外に移す「移転」と、手元資金で受け止める「保有」です(損失を減らす「軽減」は厳密にはリスクコントロールの領域で、実務では3つを組み合わせます)。繰戻し還付は税制による資金確保寄りの手立てで、保険や手元資金の代わりにはなりません。還付まで時間もかかるため、「保有」を後から少し助ける位置づけです。

なお、繰戻しを選ばず、赤字を翌期以降に繰り越して将来の黒字と相殺する方法もあります(青色申告なら最長10年)。今お金が必要か、将来の税を減らしたいかで向き不向きが変わります。どちらが有利かは会社の状況によります。

自社で書き出してみる問い

  1. 前期に法人税を納めましたか。今期が赤字になりそうなら、戻る可能性がある金額はおおよそいくらでしょうか。
  2. 青色申告は続いていますか。決算から申告期限まで、間に合う段取りになっていますか。
  3. 台風で設備や商品に損害が出たとき、保険金・手元資金・税の還付が、いつ・いくら入るかを並べられますか。

まとめ

中小企業は、赤字の年に前期の法人税の一部を返してもらえる可能性があります。カギは「青色申告の継続」と「期限内の請求」です。災害時には特例もあります。ただ、これは保険や手元資金を補う手立てです。まずは自社の前期の税額と申告スケジュールを確認してみてください。

参考資料

  • 国税庁 タックスアンサー No.5763「欠損金の繰戻しによる還付」(令和8年4月1日現在法令等)
  • 国税庁 タックスアンサー No.5762「青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除」(令和8年4月1日現在法令等)
  • 法人税法第80条、租税特別措置法第66条の12

本記事は一般的な情報提供であり、個別の保険契約・税務判断・資金繰り・投資判断等を助言するものではありません。実際の判断は、自社の状況に応じて、保険会社・保険代理店・保険仲立人・税理士等の専門家にご相談ください。

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