保険は、リスクを自社の外へ移す仕組みです。では、その移した先の保険会社が倒れたら、保険金はどうなるのか。契約者を守る仕組みと、会社の規模で引かれている線を整理します。

守られる範囲は、保険の種類で分かれる

保険会社が破綻しても、契約がその日に消えるわけではありません。受け皿として「保険契約者保護機構」(破綻した保険会社の契約を引き継ぎ、保険金の一部を補償する仕組み)が用意されています。ただし、補償の手厚さは保険の種類ごとに違います。

自賠責保険と家計地震保険(住宅向けの地震保険)は、補償割合100%です。任意の自動車保険は、破綻後3か月の間に起きた事故なら保険金が全額支払われ、3か月を過ぎると80%になります。生命保険は、責任準備金(将来の支払いに備えて積んであるお金)の原則90%までが補償されます。予定利率の高い契約では、この90%からさらに引き下げられることがあります。

傷害や医療に関する保険は、また別の扱いになります。自社の契約がどれに当たるかは、保険証券と「契約者保護機構」の記載を見るのが確実です。

会社の火災保険・賠償責任保険には「20人」の線がある

ここが、経営者にいちばん知っておいてほしいところです。火災保険と、賠償責任保険・動産総合保険などの「その他の損害保険」は、契約者が個人、小規模法人、マンション管理組合である場合に限って補償の対象になります。小規模法人とは、破綻の時点で常時使用する従業員が20人以下の法人です。

つまり、従業員が21人以上の会社が契約している火災保険や賠償責任保険は、原則として保護機構の補償対象から外れます。ただし例外があります。契約者がこの範囲の外にある会社でも、被保険者である個人や小規模法人などが実質的に保険料を負担すべき契約であれば、その被保険者に関する部分は補償の対象になります。原則どおり外れる場合は、破綻した保険会社の財産の範囲でどれだけ戻るか、という話になります。保険料の払い方が同じでも、守られ方は会社の規模と契約の形で変わるわけです。

共済契約と、少額短期保険業者(いわゆるミニ保険の会社)の契約は、この保護機構の対象外です。補償の中身が似て見えても、後ろにある仕組みは違います。

石垣島のような離島では、大きな台風が来ると同じ地域から請求が一度に出ます。保険会社が支払い切れるかどうかは、島の会社にとって遠い話ではありません。

2026年3月から、会社の体力の測り方が変わった

金融庁は2026年3月31日から「経済価値ベースのソルベンシー規制」(ESR。保険会社が支払い切れる体力をどれだけ持っているかを測る新しい指標)を適用しています。これまでのソルベンシー・マージン比率は200%を下回ると早期是正措置の対象でしたが、新しいESRでは100%を下回った場合が対象になります。

大きな違いは、保険の負債を決算時の金利などで時価評価する点です。数字の意味が変わるので、去年までの比率とそのまま並べて比べることはできません。保険を託す先を見るときは、比率の大小よりも「どの規制の数字か」を先に確かめる、という読み方になります。なお、ESRが100%以上であることは監督上の基準を満たしているという意味で、破綻しないことを保証するものではありません。

リスクファイナンスの中心は、保険などで外に移す「移転」と、手元資金などで自社が持つ「保有」の二つです。保護機構は移転の取りこぼしを受け止める仕組みですが、全部は受け止めません。残った分は、結局は保有の側で持つことになります。なお、設備の点検やBCPのように損害そのものを小さくする手立ては、厳密にはリスクコントロールの領域で、実務ではこの三つを組み合わせて考えます。

自社で書き出してみる

  1. 自社の従業員は、常時使用で何人か。火災保険・賠償責任保険が保護機構の対象に入る側か、外れる側か。
  2. いま契約しているのは保険か、共済か。保険証券または加入証書で確かめる。
  3. 保険金が8割しか入らなかったとして、その差額を手元資金で何か月分まで持ちこたえられるか。

まとめ

保険会社の破綻は毎年起きることではありません。けれど、起きたときにどこで線が引かれるかは、すでに決まっています。その線の位置を知っておけば、移転と保有の配分を、人に決めてもらわずに自分で決められます。

参考資料

  • 損害保険契約者保護機構「よくあるご質問」Q1・Q2(補償対象となる保険契約の範囲、小規模法人の定義、破綻後3か月間の取扱い、実質的に保険料を負担する被保険者に係る部分の取扱い)
  • 日本損害保険協会「損害保険Q&A」Ⅶ.契約者保護の仕組みについて(保険種目別の補償割合)
  • 金融庁「保険契約者保護機構について」(生命保険の責任準備金90%、高予定利率契約の取扱い)
  • 金融庁「経済価値ベースのソルベンシー規制の概要」2026年7月(2026年3月31日適用開始、早期是正措置はESR100%基準)

本記事は一般的な情報提供であり、個別の保険契約・税務判断・資金繰り・投資判断等を助言するものではありません。実際の判断は、自社の状況に応じて、保険会社・保険代理店・保険仲立人・税理士等の専門家にご相談ください。

自社の契約がどちら側の線にあるか分からない、という段階からご相談いただけます。初回のご相談は無料です。