災害や急な売上減に備える「セーフティネット保証」とは
台風で店を閉めた。取引先の不振で売上が急に落ちた。そんなとき、経費の支払いは待ってくれません。この記事では、こうした「もしも」に備える国の制度、「セーフティネット保証」と「危機関連保証」を、やさしく整理します。読んだあとに、自社で確認したいことが見えてくる内容です。
セーフティネット保証ってなに?
これは、災害や不況で経営が苦しくなった中小企業が、銀行からお金を借りやすくするための国の制度です。信用保証協会(借入の「保証人」の役割をする公的機関)が、いつもの保証枠とは別に「別枠」を用意してくれます。
別枠の限度額は、無担保で8,000万円、普通保証で2億円、あわせて最大2億8,000万円です。ふだんの借入枠を使っていても、この枠は別に確保できます。保証料率(協会に払う手数料の割合)は、おおむね年1%以内が目安です(協会や制度ごとに異なります)。
使うには、法人の場合、登記上の住所地または事業実体のある事業所の所在地の市区町村で「認定書」をもらいます。その後、金融機関や信用保証協会に保証付き融資を申し込み、審査を受けます。銀行に行く前の、最初のひと手間です。
4号と5号のちがい
セーフティネット保証には種類があり、代表的なのが「4号」と「5号」です。
4号は、地震や台風などの災害向けです。国が地域と期間を指定したときに使えます。基本的な要件は、災害後の最近1か月の売上高などが前年同月より20%以上減っており、さらに、その後2か月を含む3か月でも前年同期より20%以上減る見込みであることです(創業まもない場合などは別の基準があります)。保証割合は借入額の100%です。
5号は、全国的に業況が悪化しているとして国が指定した業種向けです。代表的な要件は、最近3か月の売上高などが前年同期より5%以上減っていることですが、原油等の価格上昇や、利益率の低下による基準などもあります。保証割合は80%です。指定業種は年4回、見直されます。
4号と5号は、同じ2億8,000万円の枠を分け合います。両方を使っても枠が増えるわけではない点に注意してください。なお、大きな経済危機や災害のときに国が発動する「危機関連保証」も、これらとは別に100%・別枠で用意されます(保証料率は0.8%以内が目安)。
「知っておく」ことが備えになる
リスクへの財務的な備えの中心は、保険で他人に肩代わりしてもらう「移転」と、自社のお金でしのぐ「保有(手元資金)」です。信用保証は、そのどちらでもなく、いざというときに外からお金を借りやすくする仕組みです。手元資金を主役にしつつ、それを補う「予備の蛇口」と考えると分かりやすいでしょう。なお「100%保証」「80%保証」は、返済できなくなったときに信用保証協会が金融機関へ肩代わりする割合のことで、会社の返済義務そのものがなくなる意味ではありません。
大事なのは、困ってから慌てて調べるのではなく、平時に制度の存在と手順を知っておくことです。台風の多い石垣島や離島では、災害向けの4号が身近な備えになる場面もあります。使えるかどうかは、そのとき国が指定しているかによります。まずは自社の取引金融機関や、地元の信用保証協会に一度たずねておくと安心です。
自社で書き出してみましょう。
- 経費の支払いが止まらないまま売上だけが落ちたら、あと何か月しのげますか(手元資金の月数)。
- 取引している銀行と、地元の信用保証協会の連絡先を、すぐ出せますか。
- 認定書をもらうために必要な売上台帳や試算表は、いつでも用意できますか。
まとめ
セーフティネット保証は、災害や不況で資金が詰まりそうなとき、通常とは別枠で借入を後押しする国の制度です。4号は災害向けで100%保証、5号は業況の悪い業種向けで80%保証。使うには市区町村の認定が要ります。手元資金という「本命の備え」に、この「予備の蛇口」を組み合わせておく。それが、もしものときの安心につながります。
参考資料
・中小企業庁「セーフティネット保証制度 概要」
・中小企業庁「セーフティネット保証制度(5号:業況の悪化している業種(全国的))」
・中小企業庁「金融支援」
(いずれも2026年9月時点で参照)
本記事は一般的な情報提供であり、個別の保険契約・税務判断・資金繰り・投資判断等を助言するものではありません。実際の判断は、自社の状況に応じて、保険会社・保険代理店・保険仲立人・税理士・取引金融機関・信用保証協会等の専門家にご相談ください。制度の要件や指定は変わることがあるため、利用前に最新の公式情報をご確認ください。
一般社団法人リスクファイナンス研究所では、手元資金と公的制度を組み合わせた「もしも」への備えについて、初回のご相談を承っています。お気軽にお問い合わせください。