会社の備えというと、まず保険が思い浮かびます。ただ、保険で移しきれない部分は、最後は自社のお金で受け止めることになります。この記事では、その体力を厚くする手立ての一つ、日本政策金融公庫の「資本性ローン」の仕組みと限界を整理します。

備えの土台は「移転」と「保有」

リスクファイナンス(リスクへの財務的な備え)は、大きく2つです。1つは「移転」。保険などで損失を他社に引き受けてもらいます。もう1つは「保有」。自社の手元資金や自己資本で受け止めます。なお、防火設備や安全教育のように損失そのものを起きにくくする取り組みは、厳密にはリスクコントロールの領域です。実務ではこの3つを組み合わせます。

帝国データバンクによると、2026年上半期の企業倒産は5,335件で前年同期より6.6%増えました。物価高が要因の倒産は556件、人手不足によるものは227件で、いずれも過去最多です(2026年7月8日発表)。

石垣島のような離島では、持ちこたえる力の意味が少し重くなります。台風や物流の乱れで復旧が延びると、売上が止まる期間も長くなりやすいからです。

借入なのに、自己資本とみなされる

そこで知っておきたいのが、日本政策金融公庫の「挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)」です。特徴は3つあります。

  • 期限一括償還。最終回まで元金を返さず、それまでは利息だけを払います。
  • 無担保・無保証人。
  • 金融機関の資産査定(貸し手が財務内容を評価する作業)のうえで、この借入を自己資本とみなすことができます。

3つ目が要点です。自社の決算書では借入金でも、金融機関の評価では自己資本に近いものとして扱われます。ここが普通の融資と違います。

利率は直近の決算の業績に応じて1年ごとに変わり、税引後の当期純利益が0円以上なら返済期間に応じた利率、0円未満なら一律0.50%です(2026年9月時点。利率は見直されるため最新は公庫でご確認ください)。融資限度額は国民生活事業で7,200万円(別枠)、中小企業事業で15億円。返済期間は国民生活事業で5年1ヵ月以上20年以内です。

ただし「借りたお金」であることは変わらない

これは融資です。最終回には元金をまとめて返す必要があります。どの会社でも使えるわけではなく、新規開業・新事業・事業承継・企業再建など対象の融資制度に当てはまることが前提で、審査もあります。

自己資本とみなす扱いも、残りの期間が5年を切ると毎年20%ずつ減っていきます。借りた直後と満期直前では効き方が違います。

そして、保険の代わりにはなりません。火災や賠償のように一度に大きな金額が出ていくリスクは、保険(移転)で受け止めるほうが合う場面が多いといえます。資本性ローンが支えるのは、その手前の「自前で持ちこたえる厚み」です。

自社で書き出してみる

  1. 売上が3か月細ったとき、自社の手元資金は何か月分もちますか。
  2. いまの保険で移せる損失と、自社のお金で受け止めることになる損失は、それぞれ何ですか。

まとめ

まず「移転」と「保有」のどちらが足りていないかを見極める。そのうえで、保有を厚くする選択肢として、こうした制度を知っておく。順番を逆にしないことが大事だと考えています。

参考資料

  • 日本政策金融公庫「挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)」国民生活事業・中小企業事業(2026年9月閲覧)
  • 帝国データバンク「倒産集計 2026年上半期報(1月〜6月)」2026年7月8日発表

本記事は一般的な情報提供であり、個別の保険契約・税務判断・資金繰り・投資判断等を助言するものではありません。実際の判断は、自社の状況に応じて、保険会社・保険代理店・保険仲立人・税理士等の専門家にご相談ください。融資制度の利用可否・条件は日本政策金融公庫および取引金融機関にご確認ください。

自社の「移転」と「保有」のバランスを整理したい方は、初回のご相談を承っています。