「保険には入っている。だからもう大丈夫」――そう思っていませんか。この記事では、①なぜ損害保険は「入って終わり」にできないのか、②見直すときに見る3つの視点、を、2025年12月に公表された最新の調査をもとに整理します。読み終えたら、自社の保険を点検する入り口が見えるはずです。

なぜ「入って終わり」にできないのか

日本損害保険協会が2025年12月に公表した調査(中小企業の経営者・従業員1,050人が対象)では、約4割の企業が損害保険を5年以上見直していないことが分かりました。中でも26.8%は、一度も見直しや加入の検討をしたことがない、と答えています。

一方で、実際に被害を受けた企業の54.5%が「リスクへの備えが足りなかった」、51.1%が「被害額がこんなに高くなるとは思わなかった」と振り返っています。被害額は中央値で388万円、1億円以上のケースも7.0%ありました。会社を取り巻くリスクは年々変わります。建物の価値、売上の規模、取引先、働き方――どれも数年で変わるのに、保険だけが昔のままになりやすい。これが「入って終わり」の落とし穴です。

見直すときの3つの視点

リスクファイナンス(リスクへの財務的な備え)の中心は、保険などでリスクを他者に移す「移転」と、手元資金で自分が受け止める「保有」です。保険の見直しは、この「移転」の中身を今の会社に合わせ直す作業だと考えると分かりやすくなります。(防災やBCPで被害そのものを小さくする「軽減」は、厳密には別の領域=リスクコントロールで、実務では組み合わせて使います。)

視点は3つです。1つ目は補償額のズレ。建築費や資材の値上がりで、いざ建て直すときにかかる費用(再調達価額)が契約時より上がっていることがあります。特に台風の多い沖縄・離島では、資材が本土から届くぶん復旧費用が上ぶれしやすく、ズレが表に出やすい点に注意が要ります。

2つ目は補償範囲の抜け。同じ調査では、加入率は火災保険が58.6%と高い一方、それ以外の保険は3割前後かそれ以下にとどまります。自然災害は「損害保険で備えたいリスク」の1位(39.5%)ですが、水災や休業(事業が止まっている間の損失)が対象に入っているかは契約ごとに違います。3つ目は会社の変化との整合。売上や従業員数、事業内容が変われば、必要な補償も変わります。証券に書かれた金額や範囲が、今の会社の姿と合っているかを確かめる、という視点です。

自社で書き出してみましょう

答えはお渡ししません。代わりに、自社で考えるための設問を置いておきます。証券を一枚出してくるだけでも、点検の一歩になります。

  1. いま加入している損害保険を、最後に見直したのはいつか。補償の中身をすぐ言えるか。
  2. 今の建物・設備を建て直す・買い直すのに必要な金額と、契約の補償額はそろっているか。
  3. 自然災害・休業・賠償など、自社で「起きたら一番痛い」リスクは、いまの契約で補償の対象に入っているか。

まとめ:保険は「棚卸し」するもの

保険は、一度入れば終わりではありません。会社もリスクも動くからこそ、ときどき棚卸しして「今の会社に合っているか」を確かめる。同じ調査でも、企業の側が損害保険会社に最も期待することは「定期的な保険の最適化」(27.9%)でした。まずは証券を引っぱり出し、契約日と補償額を確かめるところから始めてみてください。

参考資料

  • 日本損害保険協会「中小企業におけるリスク意識・対策実態調査2025」調査結果報告書(2025年12月)、同ニュースリリース(2025年12月11日公表)

本記事は一般的な情報提供であり、個別の保険契約・税務判断・資金繰り・投資判断等を助言するものではありません。実際の判断は、自社の状況に応じて、保険会社・保険代理店・保険仲立人・税理士等の専門家にご相談ください。

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