運んでもらう荷物が壊れたら誰が払う? ― 離島の物流リスクと貨物保険
仕入れた商品や、出荷した製品。運送のとちゅうで壊れたり、水にぬれたりしたら、その損は誰が負うのでしょうか。「運んだ会社が払ってくれる」と思いがちですが、いつもそうとは限りません。この記事では、運送会社の賠償(弁償)には限りがあること、そして荷物を自分で守る「貨物保険(運送保険)」の基本を、やさしく整理します。
背景には、物流を支える人手不足があります。国は、何も対策をしなければ2024年度に約14%、2030年度に約34%の輸送力が不足するおそれがあると試算していました(いずれも、対策を講じない場合の見込みです)。トラックドライバーの時間外労働の上限規制などを受けたもので、いまは官民で対策が進められています。それでも、輸送の担い手不足は、これからも続く課題です。輸送が細ると、遅れや輸送計画への影響も、以前より身近になります。
運送会社が、いつも全部払ってくれるわけではない
トラックで運ぶ荷物では、「標準貨物自動車運送約款」をもとにした契約が広く使われています。これは国が定めた標準的な契約条件(ひな型)です。ただし、船や飛行機を使う輸送、宅配便などでは、別の約款が使われることがあります。離島への輸送では複数の運送手段を組み合わせることもあるため、実際にどの約款・契約が使われているかを確認することが大切です。まずは、トラック輸送の代表例として、この約款を見てみます。この約款には、運送会社が責任を負わない場合(免責=弁償しなくてよい場合)が決められています。
- 地震・津波・高潮・大水・暴風雨・地すべり・山崩れなどの天災による損害は、運送会社の免責とされています。つまり、台風で荷物がぬれても、原因や契約内容によっては、運送会社に弁償を求められないことがあります。
- 荷物そのものの欠陥や、自然な傷み、荷造り(こん包)の不十分さによる損害も、対象から外れやすい部分です。
- 弁償してもらえる場合でも、金額や、請求できる期間には制限があります。
大切なのは、「相手が全部払ってくれる」を前提にしないことです。とくに自然災害では、荷主(荷物の持ち主)側が損をかぶることがあります。
自分の荷物は「貨物保険(運送保険)」で守る
貨物保険(運送保険)は、荷主が自分の荷物にかける保険です。輸送中や保管中に、荷物が壊れる・失われる・盗まれる、といった損害を補償します。リスクファイナンスの言葉でいうと、これは「移転」です。損を自分の手元資金でかぶる(=保有)のではなく、保険会社に移すという考え方です。
ただし、すべての損が対象になるわけではありません。荷物の自然な傷みや、荷造りの不備、わざと起こした損害などは対象外です。契約の前に、「何が補償され、何が外れるか」を必ず確認しましょう。補償を広げれば保険料は上がり、しぼれば下がります。自社の荷物と予算に合わせて選ぶことになります。
運送会社が入る「運送業者貨物賠償責任保険」とは別の保険です。これは運送会社を守るための保険で、荷主の荷物を必ず全額カバーするものではありません。相手任せにせず、自分の荷物は自分で守る、という発想が大切です。
石垣島など離島では、本土との行き来を船と飛行機にたよります。台風による欠航や遅れは、身近な出来事です。だからこそ、輸送に関わるリスクを見直し、「手元資金でかぶる範囲」と「保険で移す範囲」を分けて考える価値があります。
自社で書き出してみる
- 自社が扱う荷物のうち、壊れたり失われたら困るものは何か。1回あたりの金額はいくらか。
- その荷物は、いまどんな契約・約款で運ばれているか。自然災害のときの扱いはどうなっているか。
- 万一のとき、その損を手元資金でかぶれるか。貨物保険で移しておくべき範囲はどこか。
まとめ ― 「相手が払ってくれる」を前提にしない
運送会社の賠償には、約款で決まった限界があります。とくに自然災害では、荷主が損をかぶることもあります。自分の荷物は貨物保険(運送保険)で自分で守る。これが基本の備えです。自然災害の多い離島ほど、この視点は役立ちます。答えは会社ごとにちがいます。まずは「困る荷物」を書き出すところから始めてみてください。
参考資料
- 国土交通省「標準貨物自動車運送約款」(平成2年運輸省告示第575号、最終改正 令和7年国土交通省告示第193号。2025年4月1日施行)
- 国土交通省「物流の2024年問題」関連資料(輸送力不足の試算:何も対策をしなければ2024年度で約14%、2030年度で約34%不足するおそれ。いずれも対策を講じない場合の見込み)
- 日本損害保険協会(損害保険の種類・補償内容の解説)
本記事は一般的な情報提供であり、個別の保険契約・税務判断・資金繰り・投資判断等を助言するものではありません。実際の判断は、自社の状況に応じて、保険会社・保険代理店・保険仲立人・税理士等の専門家にご相談ください。
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