会社の火災保険に入っていれば、設備や在庫は守られている。そう思っていませんか。実は、火災保険がどこまで守るかは、契約によって変わります。運ぶ・預ける・外へ持ち出す――そんな「動く財産」は、契約によっては補償から抜け落ちることがあります。この記事では、そのすき間を埋める「動産総合保険」の基本を、やさしく整理します。

火災保険が守る「場所」は、契約でちがう

火災保険は、保険証券に書かれた建物と、その中にある設備・什器(しゅうき=棚やカウンターなどの備え付けの家具)・在庫を守ります。とても頼りになる保険です。

ただし、企業向けの火災保険は、補償する「場所」の範囲が契約によって変わります。証券に書かれた敷地の中だけを対象とする契約では、商品を車で配送している途中、展示会に持ち出した機材、修理のために外部へ預けた設備など、「敷地の外にある間」の事故が対象外になることがあります。一方で、敷地の外や輸送中まで補償できる火災保険の商品もあります。まずは、今の契約がどこまでを対象にしているかを確かめることが大切です。

石垣島などの離島では、設備や在庫の多くを本土から船やトラックで運びます。届くまでの「運んでいる時間」が長いぶん、その間に事故と向き合う場面も生まれます。再び仕入れ直すにも、時間と送料がかかります。

「動産総合保険」がふさぐ、すき間

動産総合保険は、事業で使う機械・器具・什器・商品などの「動産(=動かせる財産)」を対象に、日本国内で起きた偶然の事故を幅広く補償する保険です(日本損害保険協会)。

特長は、対象の財産が「保管中・運送中・展示中」のどこにあっても、補償の対象になりうること。火災だけでなく、落下・破損・盗難など、幅広い事故に備えられます。壊れた物を片づける費用などがつく商品もあります。

これは、リスクを保険会社に引き受けてもらう「リスクの移転」という考え方です。手元資金でそなえる「保有」(自分で持っておくお金)と組み合わせて、自社に合う配分を考えるのが基本になります。

ただし万能ではありません。自動車・航空機・船舶などは、一般に動産総合保険の対象外です。また、現金・有価証券などは、基本の補償では対象外でも、特約(=オプションの補償)によって対象にできる場合があります。何が対象で、何が対象外かは商品や契約によって異なります。契約の前に必ず確認しましょう。

保険料が上がる今こそ「重複と抜け漏れ」の点検を

家庭向け火災保険の目安となる「参考純率(さんこうじゅんりつ=各社が保険料を決めるときの基準)」は、2023年6月に全国平均で13.0%引き上げられ、過去最大の改定率となりました(損害保険料率算出機構)。これは家庭向けの目安で、実際に契約者が払う保険料や、企業向けの改定率とは異なります。それでも、保険料が上がりやすい局面であることは確かです。

保険料が上がるときこそ、点検の好機です。「同じ財産に二重にかけていないか」、逆に「動く財産が抜け落ちていないか」を見直す。ムダを削り、本当に必要な備えに振り向けましょう。

自社で書き出してみましょう

まずは、自社の「動く財産」を書き出すことから始まります。

  1. 外へ持ち出す・配送する・預ける財産(機材、商品、設備)は何がありますか。1回あたり、いくらぶんを動かしていますか。
  2. 今の火災保険は、その財産が「敷地の外にある間」も対象ですか。証券のどこで確認できますか。
  3. もしその財産が運送中に全部だめになったら、手元資金だけで再調達できますか。何日で仕入れ直せますか。

まとめ

企業向け火災保険は、補償する場所の範囲が契約でちがいます。敷地の外や運送中が対象外になる契約では、動産総合保険などで「動く財産」のすき間を補える場合があります。答えを急ぐ必要はありません。まず自社の“動く財産”を書き出し、今の契約でどこまで守れているかを、一つずつ確かめる。その足場ができれば、あとは専門家と一緒に、抜け漏れとムダの両方を整えていけます。

参考資料

  • 日本損害保険協会「動産総合保険とは?企業が知っておきたい補償内容と加入時のポイント」
  • 損害保険料率算出機構「火災保険 参考純率」(2023年6月改定・全国平均+13.0%、水災料率の細分化)

本記事は一般的な情報提供であり、個別の保険契約・税務判断・資金繰り・投資判断等を助言するものではありません。実際の判断は、自社の状況に応じて、保険会社・保険代理店・保険仲立人・税理士等の専門家にご相談ください。

「自社の“動く財産”を一度棚卸ししたい」という方は、初回のご相談を承っています。お気軽にお声がけください。