育休を支える給付が2025年に拡充 ― 会社が備えるのは「一時的な欠員」というリスク
2025年4月、雇用保険に新しい給付が二つ加わりました。育児中の従業員の収入を、公的に支える仕組みです。この記事では、その二つの中身を短く整理します。あわせて、会社の側が備えたい「一時的な欠員」というリスクの考え方をお伝えします。
2025年4月、育休を支える二つの給付が始まった
一つ目は「出生後休業支援給付金」です。子どもが生まれた直後の時期に、両親がともに14日以上の育児休業を取ると受け取れます(配偶者が働いていない場合など、本人だけの取得でよい例外もあります)。これまでの育児休業給付(休業前賃金の67%)に、13%が上乗せされ、合わせて80%になります。期間は最大28日間です。
この給付は非課税です。さらに、一定の要件を満たす育休期間は、申し出により健康保険・厚生年金保険の保険料も免除されます。これらを合わせると、多くの人は手取りがほぼ減りません。ただし給付の計算に使う金額には毎年8月に見直される上限があり、賃金が高い場合などは手取り10割相当にならないこともあります。
二つ目は「育児時短就業給付金」です。2歳未満の子を育てるために時短勤務(労働時間を短くする働き方)をする雇用保険の加入者で、一定の要件を満たす場合に受け取れます。時短勤務中の賃金が、時短前の水準の90%以下なら、原則としてその賃金の10%が支給されます。90%を超える場合は、賃金と給付の合計が時短前を超えないよう、支給の割合が調整されます。
どちらも雇用保険から支給される公的な給付で、給付金そのものを会社が直接支払うわけではありません。また、育児休業中の毎月の健康保険・厚生年金保険料は、会社の届け出により、一定の要件を満たす期間について会社の負担分・本人の負担分ともに免除されます。月末をまたがない短い育休でも、育休を始めた月に14日以上取得するなどの要件を満たせば、その月の保険料が免除されます(賞与にかかる保険料には別の要件があります)。育休中のこの期間は、会社の法定福利費(人を雇うとかかる社会保険料などの費用)もその分軽くなります。
会社が備えるのは「人が一時的に抜ける」リスク
給付が手厚くなり、育休や時短を選ぶ人は増えていきそうです。会社にとっての課題は、お金というより「その間、人が一時的に抜ける」ことです。少人数の会社ほど、一人の穴は大きく響きます。
この「欠員リスク」は、保険で移しにくい種類のリスクです。リスクファイナンス(リスクへの財務的な備え)の中心は、保険などで外へ移す「移転」と、手元資金で自分が持つ「保有」の二つ。欠員そのものは、このどちらでも直接は埋められません。
だからこそ効くのが「仕組み」です。仕事のやり方をそろえて誰でも引き継げるようにする、一人が複数の役割をこなせるようにする、といった備えです。これはリスクを小さくする工夫で、厳密には「軽減(リスクコントロール)」の領域にあたります。実務では、この仕組み(軽減)と、代替要員の費用に充てる手元資金(保有)を組み合わせて備えます。
石垣島のような小さな島では、代わりの人をすぐ雇うのが特に難しいことがあります。人が抜けても回る仕組みを、平時のうちに少しずつ整えておく。それが遠回りのようで、いちばん確かな備えになります。
自社で書き出してみる
- いま、誰か一人が長く休むと止まってしまう仕事はどれですか。
- その仕事を、他の人が引き継げるよう手順にできていますか。
- 代わりの人を頼むとしたら、当面いくら手元資金が必要ですか。
まとめ
2025年4月、育休や時短勤務を支える給付が二つ増えました。従業員の収入を支える給付金そのものは、雇用保険から支給されます。一方、会社が向き合うのは「一時的な欠員」や業務量の減少というリスクです。保険で移しにくいぶん、仕組み(軽減)と、代替要員などに使える手元資金(保有)で備える。この切り分けが、落ち着いた対応につながります。
参考資料
- 厚生労働省「2025年4月から『出生後休業支援給付金』『育児時短就業給付金』が始まります」
- 厚生労働省「育児休業等給付について」
- 日本年金機構「厚生年金保険料等の免除(産前産後休業・育児休業等期間)」
本記事は一般的な情報提供であり、個別の保険契約・税務判断・資金繰り・投資判断等を助言するものではありません。実際の判断は、自社の状況に応じて、保険会社・保険代理店・保険仲立人・社会保険労務士・税理士等の専門家にご相談ください。給付の要件や上限額は変更されることがあります。最新の内容は厚生労働省・日本年金機構の公表資料でご確認ください。
当研究所では、こうした制度改正を「自社にどう当てはめるか」を一緒に考える初回相談を承っています。お気軽にお問い合わせください。