「親の介護で辞める」は保険で移しにくい ― 2025年4月に義務化された両立支援と、仕組み・手元資金で備える
この記事では、次のことが分かります。介護を理由に会社を辞める人が、いま全国でどれくらいいるのか。2025年4月に会社へ義務づけられた「仕事と介護の両立支援」とは何か。そして、この危険をリスクファイナンス(リスクへのお金の備え)の目線でどう考えるか、です。
介護で辞める人は、年に約10.6万人
総務省の調査によると、調査時点からみた過去1年間に、介護や看護を理由に仕事を辞めた人は約10.6万人でした(総務省「就業構造基本調査」2022年)。前回の2017年調査より約7,000人増えています。
辞める人だけの話ではありません。働きながら家族の介護をする人(ビジネスケアラー)は、2030年に約318万人まで増えると見込まれています。経済産業省は、それによる経済損失を約9兆円と試算しました。その大半は、離職そのものではなく、働きにくさによる生産性の低下です(経済産業省の資料より)。
中小企業では、一人が抜ける重みが大きくなります。長年の勘を持つベテランや、経営者自身が親の介護に直面することもあります。「誰にでも、いつでも起こりうる」危険だと考えておくと安全です。
2025年4月、会社に「両立支援」の義務ができた
2024年5月に成立した改正育児・介護休業法により、2025年4月1日から、介護離職を防ぐための取り組みが会社の義務になりました(厚生労働省)。主な内容は次のとおりです。
一つ目は、働く環境の整備です。研修の実施、相談窓口の設置、制度を使った事例の共有、利用をすすめる方針の周知――この4つのうち、少なくとも1つを行います。二つ目は、介護に直面した旨を申し出た従業員へ、使える制度を個別に知らせ、利用の意向を確かめることです。三つ目は、40歳前後の従業員へ、早めに制度の情報を伝えることです。あわせて、労使協定で勤続6か月未満の人を介護休暇の対象から外せる仕組みも廃止されました。
これらは「制度を用意して使いやすくする」取り組みです。危険そのものを起きにくくする備えなので、厳密にはリスクコントロール(リスクの軽減)にあたります。
保険で移しにくいから、「仕組み」と「手元資金」で
リスクファイナンスの中心は、危険を保険会社などへ移す「移転」と、自分のお金で受け止める「保有」の2つです。ここに、危険を起きにくくする「軽減」を組み合わせて使います。
「人が介護で辞める」危険は、火災や事故のように保険で移すことが難しい種類です。だからこそ、まずは軽減が土台になります。今回の法改正が後押しするのは、この軽減の部分です。両立の仕組みを整えれば、辞めずに続けてもらえる可能性が高まります。
それでも人が抜けると、引き継ぎや採用、応援の外注などにお金がかかります。この出費に耐える手元資金(すぐ使える現金)が、保有としての備えになります。
経営者やキーパーソンが長く離れる場面では、会社の当面のお金が回るかも大切です。手元資金と保険をどう組み合わせるかは、以前の「事業保障資金」の考え方ともつながります。石垣島のような離島では、代わりの人材をすぐ探しにくい分、早めの備えがより効いてきます。
自社で書き出してみる問い
- いま、自社の従業員のうち、親などの介護に直面しそうな年代(40〜50代)は何人いますか。
- その人が急に数か月休んだら、誰がどの仕事を引き継げますか。引き継げない仕事はどれですか。
- 雇用環境整備として、相談窓口や研修など4つの措置のうち1つ以上を実施していますか。あわせて、申し出た従業員への個別周知・意向確認や、40歳前後での情報提供にも対応できていますか。
まとめ
介護離職は、保険で移しにくいぶん、仕組み(軽減)と手元資金(保有)で備える危険です。2025年4月の法改正は、その仕組みづくりを後押しします。義務への対応を、危険への備えを見直すきっかけにしてみてください。答えは会社ごとに違います。まずは自社の状況を書き出すところから始めてみましょう。
参考資料
- 総務省「令和4年就業構造基本調査」(介護・看護を理由とする離職者 約10.6万人)
- 経済産業省「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」ほか(2030年のビジネスケアラー約318万人、経済損失約9兆円の試算)
- 厚生労働省「育児・介護休業法の改正について」(2025年4月1日施行/介護離職防止のための両立支援の強化)
本記事は一般的な情報提供であり、個別の保険契約・税務判断・資金繰り・投資判断等を助言するものではありません。実際の判断は、自社の状況に応じて、保険会社・保険代理店・保険仲立人・税理士・社会保険労務士等の専門家にご相談ください。
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