その製品、回収する費用は誰が払う? ― PL保険では出にくい「リコール費用」への備え
お店に出した商品を、あとから回収することになったら。その回収にかかるお金は、誰が負担するのでしょうか。この記事では、身近に起きている「自主回収(リコール)」の実情と、その費用に備える「リコール保険」の考え方を、やさしく整理します。読み終えると、自社に回収費用のリスクがあるかを確かめる入り口が見えてきます。
自主回収は、特別な事故だけで起きるわけではない
食品を扱う会社では、2021年6月から、食品衛生法に違反する、または違反するおそれがある食品等や、アレルゲン・消費期限など安全性に関わる表示に誤りがある食品を自主回収するときに、行政(都道府県知事等)へ届け出る制度が始まりました。届け出た情報は、国のシステムで一元的に管理・公表されます。
このうち、消費者庁がまとめた「食品表示法に基づく自主回収」だけでも、制度開始から2024年9月末までの公開件数は5,584件にのぼります。回収の理由でいちばん多いのはアレルゲン(アレルギーの原因になる成分)の表示に関するもので58.6%、次いで賞味期限などの期限表示に関するものが31.3%でした。しかも、その多くのきっかけは「ラベルの貼り間違い」や「印字の入力ミス」です。大きな事故というより、日々の表示作業のうっかりから起きているのが実情です。
PL保険と「回収の費用」は別もの
多くの会社が入っているPL保険(生産物賠償責任保険)は、売った製品が原因で他人にケガをさせたり、物を壊したりしたときの「賠償責任」を補償するものです。一方で、製品を回収するためにかかる費用――回収品を運ぶ輸送費、一時的に預ける倉庫代、廃棄の費用、通常を超える人件費など――は、原則としてPL保険では出ません。
この回収費用に備える保険が、リコール保険(生産物回収費用保険)です。食品・飲料・化粧品などをつくる会社や、輸入・卸・小売の会社に向けた商品があります。ただし、引き受けの対象や補償の範囲、条件、支払いの上限は保険会社や商品ごとに違います。「入れば全部戻る」ものではないため、中身をよく確かめることが大切です。
リスクファイナンス(リスクへの財務的な備え)の柱は、保険などで外に「移す」ことと、手元資金などで自分で「抱える」ことの二つです。ラベルの二重チェックのように回収そのものを減らす工夫は、厳密にはリスクコントロール(リスクを小さくする活動)にあたります。実際には、ミスを減らす仕組みづくり・リコール保険・手元資金の三つを組み合わせて考えます。
まとめ ― 自社で書き出してみる
石垣島や沖縄でも、加工食品やお土産、農産物の加工品を全国・海外に出す会社は少なくありません。出荷先が広がるほど、回収が起きたときの費用と手間は大きくなりやすくなります。まずは次の点を書き出してみてください。
- もし全量回収になったら、輸送・保管・廃棄などでいくらかかりそうか、ざっくりでも見積もっていますか。
- いま入っている保険は「賠償」だけか、「回収費用」まで含むか、証券や約款で確かめましたか。
- ラベルの貼り間違いや印字ミスを防ぐ確認手順は、形だけになっていませんか。
答えを急いで出す必要はありません。自社の作業と出荷の実態に照らして、どこに備えの穴があるかを一つずつ確かめることが、最初の一歩になります。
参考資料
・消費者庁「食品表示法に基づく自主回収の届出状況(運用開始(令和3年6月1日)~令和6年9月末時点)」
・厚生労働省「食品等の自主回収報告制度(リコール)」
・三井住友海上 MSコンパス「消費者庁『食品表示法に基づく自主回収の届出状況』を公表」(2025年4月2日)
・東京海上日動火災保険「生産物回収費用保険(リコール保険)」商品ページ・ご契約の際のご注意
本記事は一般的な情報提供であり、個別の保険契約・税務判断・資金繰り・投資判断等を助言するものではありません。実際の判断は、自社の状況に応じて、保険会社・保険代理店・保険仲立人・税理士等の専門家にご相談ください。
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