会社をやめたあと、あるいは事業を引退したあとのお金を、あなたはどう用意していますか。会社員は厚生年金に加入する場合が多く、勤務先によっては退職金制度もあります。一方、個人事業主やフリーランスは、自分で積む備えがより重要になります。その代表格が「iDeCo(イデコ=自分でつくる私的年金)」です。2026年12月、そのiDeCoの仕組みが広がります。この記事では、何がどう変わるのか、そして「手元資金」との役割の違いを整理します。

2026年12月、「入れる年齢」と「積める額」が広がる

2025年の年金・税制改正と、その後の政令改正を受けて、iDeCoは2026年12月1日から二つの点が広がります。

一つは、加入できる年齢です。これまでは働き方などにより60歳または65歳になるまでが中心でしたが、2026年12月からは、一定の条件を満たす60歳以上70歳未満の方にも加入できる範囲が広がります。老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金を受け取っていないことなどの要件があるため、実際に加入できるかは個別に確認が必要です。長く働く人が、長く積めるようになります。

もう一つは、毎月積める上限額です。自営業やフリーランスの方(国民年金の第1号被保険者)は、月6.8万円から月7.5万円へ引き上げられます(国民年金基金などと合わせた上限)。会社員や公務員などの方(第2号被保険者)は、勤め先の企業年金の有無による上限の違いが見直され、企業年金と合わせた共通の上限が月6.2万円になります。実際にiDeCoへ積める額は、勤め先の企業年金の掛金額などによって変わります。新しい上限は、2026年12月分の掛金から使えます。

iDeCoの掛金は、その全額が「小規模企業共済等掛金控除」の対象になります(所得控除=所得から差し引ける仕組み)。課税所得がある方は、課税所得が減ることで所得税や住民税の負担が軽くなります。一方、課税所得がない方には、この所得控除による税負担軽減のメリットはありません。「税金がそのまま戻ってくる(還付)」制度ではなく、所得控除によって納める税を軽くする仕組みです。

ただし「すぐ使えるお金」ではない

ここで大切な注意があります。iDeCoは老後のための制度なので、原則として途中で自由に引き出すことはできません。老齢給付金は原則60歳以降に受け取りますが、実際に受け取りを始められる年齢は加入期間などによって異なります。60歳以上で初めてiDeCoに加入した方は、原則として加入から5年を経過した後に受給できます。

会社の資金繰りが苦しくなった、取引先が倒れた——。そんなときにすぐ使えるお金ではありません。つまりiDeCoは、「いざという時の手元資金」の代わりにはならないのです。

リスクへの財務的な備え(リスクファイナンス)の中心は、①保険などでリスクを外に移す「移転」と、②手元資金でリスクを自分で抱える「保有」の二つです。iDeCoはそのどちらとも違い、老後に向けてコツコツ積む「資産形成(自助)」の手立て。移転でも、すぐ使える保有でもない別ものだと切り分けると、整理しやすくなります。

だから順番が大事です。まずは数か月分の運転資金や生活費を、すぐ動かせる手元資金として確保する。そのうえで、当分使う予定のない余力を、税の後押しがあるiDeCoで長く育てる。この組み合わせが、無理のない備え方です。

個人事業主やフリーランスとして働く人にとって、会社任せにできない「引退後の自分年金」を自分の手で育てる意味は大きいはずです。石垣島のような小さな島で働く人ほど、なおさらです。

まとめ ― まず紙に書き出してみる

制度が広がっても、自分に合う使い方は人それぞれです。次の問いを、一度紙に書き出してみてください。

  1. いま、事業や生活が3〜6か月止まっても回る「すぐ使える手元資金」は、いくらありますか。
  2. その手元資金を確保したうえで、当分使わずに置いておける余力は、毎月いくらありますか。
  3. 自分は何歳まで働き、何歳から「自分年金」を受け取りたいですか。

参考資料
・厚生労働省「2025年の年金制度改正」
・「国民年金基金令等の一部を改正する政令」(政令第441号・第442号、2025年12月24日公布/2026年12月1日施行)
・iDeCo公式サイト(国民年金基金連合会)
・国税庁「No.1135 小規模企業共済等掛金控除」

本記事は一般的な情報提供であり、個別の保険契約・税務判断・資金繰り・投資判断等を助言するものではありません。実際の判断は、自社の状況に応じて、保険会社・保険代理店・保険仲立人・税理士・金融機関等の専門家にご相談ください。

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