子育て世帯の生命保険料控除が広がる ― 対象は2026年分と2027年分、「保険=移転」と「税制=後押し」を切り分ける
年齢23歳未満の扶養親族がいる人は、2026年分と2027年分の所得税で、生命保険料控除が少し広がります。この記事では、何が・いつ・誰に変わるのかを整理します。そのうえで、リスクファイナンス(リスクへの財務的な備え)の視点から、保険と税制をどう切り分けて考えるかをお伝えします。
2026・2027年分、子育て世帯の控除が広がる
令和7年度(2025年度)の税制改正で、生命保険料控除の一部が広がりました。対象は、税法上の扶養親族のうち、年齢23歳未満の人がいる場合です。扶養親族とは、配偶者を除き、生計を一にする(生活費や学費などを継続して負担する関係を含みます)親族で、所得が一定以下などの要件を満たす人をいいます。進学などで別居している子でも、仕送りなどで生計を一にしていれば当てはまる場合があります。子どもがいれば必ず対象、というわけではありません。
広がるのは「一般生命保険料控除」という枠です。おもに死亡保険(万一のとき家族へお金を残す保険)などが当てはまります。この枠のうち新しい制度(新契約)の上限が、所得税の計算で4万円から6万円に上がります。
当初は2026年分(令和8年分)だけの予定でした。その後、令和8年度の税制改正で1年延長され、2027年分(令和9年分)まで対象になりました。この延長を含む改正法は、2026年3月31日に成立しています。今のところ、2028年分以降まで続くとは決まっていません。
ここは間違えやすい(3つ)
大事な点が3つあります。
1つ目。控除全体の上限は変わりません。生命保険料控除は「一般」「介護医療」「個人年金」の3つの合計で、上限は12万円のままです。一般枠が6万円に上がっても、合計の12万円は据え置きです。すでに他の枠で上限に近い人は、増える余地が小さいこともあります。
2つ目。これは「所得控除」です。税額控除(納める税金そのものから直接差し引くしくみ)ではなく、税金を計算する前の所得から一定額を差し引くしくみです。払った保険料や控除額がそのまま戻るわけではありません。ただし、年末調整や確定申告の結果、源泉徴収で納め過ぎていた分があれば、還付されることはあります。
3つ目。6万円まで広がるのは、新しい制度(平成24年〈2012年〉1月1日以後に結んだ契約)の部分です。古い契約(旧制度)だけの人は、これまでどおり最高5万円のままです。新旧の両方に入っている場合は、計算が組み合わさります。新旧の区分と年間の支払保険料は、毎年届く保険料控除証明書で確認でき、控除額はその金額をもとに計算します。
なお、上限の6万円まで使えるのは、その年の一般生命保険料の支払額がある程度多い場合です。いくらから上限に届くかは、新しい制度だけか、新旧の両方かでも変わります。対象の人なら、だれでも自動で2万円増えるわけではありません。
保険と税制を切り分けて考える
ここで整理したいことがあります。生命保険は、万一の負担を保険会社に移す「移転」という備えです。リスクファイナンスの中心は、この「移転」と、手元資金でまかなう「保有」の2つです。
一方、税制はその備えを後押しする「別のしくみ」です。負担を軽くする手立てであって、保険そのものではありません。ここを混ぜて考えないことが大切です。
順番も大事です。「控除が広がるから入る」のではなく、「必要な保障はいくらか」を先に考える。控除は、その結果としてついてくるおまけと捉えると、判断を誤りにくくなります。
沖縄・離島でも、対象になる家庭は少なくないはずです。まずは、自分の契約が新しい制度か、扶養する23歳未満の親族がいるか。その2つを確かめるところから始めてみてください。
自社・自分で書き出してみる問い
- 自分が保険料を払っている生命保険について、新しい制度か古い制度か、年間の支払額を控除証明書で確認できるか。
- 2026年・2027年の各年末時点で、年齢23歳未満の扶養親族がいるか。
- いまの死亡保障の金額は、家族が当面暮らしていくのに足りているか。控除とは切り離して考えられているか。
まとめ
2026年分と2027年分だけ、子育て世帯の生命保険料控除が、一般枠で4万円から6万円に広がります。ただし、合計の上限12万円は据え置きで、控除額や保険料がそのまま戻る制度でもありません。保険は「移転」という備え、税制はそれを後押しする別のしくみです。必要な保障を先に、控除は後から。その順で考えると、迷いにくくなります。
参考資料
- 財務省「令和7年度税制改正」(令和7年3月)
- 財務省「令和8年度税制改正」(令和8年3月)※2027年分までの1年延長を含む改正法は2026年3月31日成立
- 国税庁「No.1140 生命保険料控除」/「No.1180 扶養控除」/「保険と税」
本記事は一般的な情報提供であり、個別の保険契約・税務判断・資金繰り・投資判断等を助言するものではありません。実際の判断は、自社の状況に応じて、保険会社・保険代理店・保険仲立人・税理士等の専門家にご相談ください。
当研究所では、こうした制度と保障の切り分けについて、初回のご相談をお受けしています。