BCPを「計画書」で終わらせない ― 事業継続を支えるリスクファイナンス
災害で会社が数日、数週間止まったとします。売上は入ってこないのに、家賃や給料などの支払いは続きます。BCP(事業継続計画)には本来、復旧の手順だけでなく、止まった間に必要なお金を見積もり、手元資金・保険・融資などで備える「財務の備え」も含まれます。この記事では、BCPを「計画書」で終わらせず、実際に使えるお金の備えまで整える大切さをお伝えします。読み終えると、自社に足りない備えが見えてきます。
BCP(事業継続計画)を作った会社は、まだ2割
BCPとは「事業継続計画」のことです。会社が災害などで止まったとき、何を優先し、どう早く立て直すかを前もって決めておく計画をいいます。
帝国データバンクの2026年の調査では、BCPを「策定している」会社は21.4%で、過去最高となりました。ただし内訳を見ると、大企業が39.9%なのに対し、中小企業は18.3%にとどまります。「策定していない」会社は全体で40.7%と、いまも4割を超えています(帝国データバンク、2026年6月)。
同じ調査で、BCPに前向きな企業が「事業の継続が困難になる」と想定するリスクのうち、最も多かったのは「自然災害」で67.8%でした。台風や地震の多い沖縄・離島では、この数字は他人事ではありません。フェリーや空の便が止まれば、部品も商品も届きません。復旧に必要な資材や人手の確保にも、時間がかかることがあります。
「計画づくり」と「お金の備え」を両方そろえる
リスクへの備えは、大きく2つに分けて考えると整理しやすくなります。1つは、被害そのものを防いだり小さくしたりする工夫(リスクコントロール)です。BCPで復旧手順を決める、設備を補強する、仕入先を分散する、などがこれにあたります。もう1つが、お金でリスクに備える「リスクファイナンス」です。その中心は次の2つです。
①移転(保険などで、損失を他者に肩代わりしてもらう)/②保有(手元の資金などで、自分で受け止める)
ここで大事な点があります。BCPを作る作業は主に「工夫」の側ですが、BCPの本来の中身には、止まった間に必要なお金を見積もり、手元資金・保険・融資でどう賄うかを決める「財務の備え」も含まれます(中小企業庁「中小企業BCP策定運用指針」)。つまり、計画書を作るだけではお金は用意できません。計画に沿って、手元資金・保険・融資枠などから、自社に必要な手段を実際に整えることで、BCPの実効性が高まります。
実際、先ほどの調査でも、備えとして上位に挙がったのは「従業員の安否確認手段の整備」(65.3%)や「情報システムのバックアップ」(59.5%)でした。人や情報を守る対策に比べ、お金の備えは後回しになりがちです(帝国データバンク、2026年6月)。
具体的には、②保有として、想定する停止期間と入金が戻るまでをまかなえる手元資金を持っておく。①移転として、建物や設備の損害を補う保険に加え、休業による利益の減少や、営業を続けるための費用を補うタイプの保険(休業補償や利益補償の特約など)も検討する。補償の範囲や限度額は商品・契約によって異なります。どれか1つで足りるとは限らないため、自社のリスクに応じて組み合わせて考えるのが実務的です。なお、保険金は事故の直後にすぐ入金されるとは限りません。その間をつなぐ手元資金の役割も大切です。
自社で書き出してみる
- 売上がゼロでも、毎月出ていくお金(家賃・給料・借入返済など)は合計いくらか。
- その状態で、手元資金だけなら何か月もちこたえられるか。
- いま入っている保険は、建物や設備の損害だけか。休業による利益の減少や、営業を続ける・再開するための追加費用はどこまで補償されるか。
まとめ
BCPは、事業を早く立て直すための大切な計画です。そしてBCPには本来、止まった間のお金をどう賄うかという「財務の備え」も含まれます。計画書を作るだけで終わらせず、手元資金(保有)や保険(移転)、融資などの手段を自社のリスクに応じて整えることが、事業継続を支えます。まずは、止まったときに毎月いくら必要かを一度書き出すところから始めてみてください。
参考資料
- 帝国データバンク「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2026年)」(2026年6月25日)
- 中小企業庁「中小企業BCP策定運用指針」
- 中小企業庁「2025年版 中小企業白書」第1部第2章第4節 BCP
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の保険契約・税務判断・資金繰り・投資判断等を助言するものではありません。実際の判断は、自社の状況に応じて、保険会社・保険代理店・保険仲立人・税理士・金融機関等の専門家にご相談ください。
当研究所では、事業継続のためのお金の備え(手元資金と保険)の整理について、初回のご相談を承っています。