所得税の「年収の壁」は、2025年(令和7年)と2026年(令和8年)で続けて引き上げられました。パートで働く家族や、アルバイトをする学生のいるご家庭にとっては、手取りに関わる大切な変更です。この記事では、いま(2026年)の基準を中心に、年ごとの違いをやさしく整理します。

本人に所得税がかかる「壁」は上がった

かつては、給与だけで働く人が年収103万円を超えると所得税がかかり始めました。これが、いわゆる「103万円の壁」です。

その後、基礎控除(ほとんどの人が差し引ける基本的な控除。所得が非常に多い人は対象外です)と、給与所得控除(給与から自動で差し引かれる、経費のようなもの)が引き上げられ、壁の位置が上がりました。パートなど給与だけで所得が低い人の場合、所得税がかからない年収の目安は、2025年で約160万円、2026年と2027年では約178万円まで広がっています。

ただし、178万円まで広げている上乗せ部分は、今のところ2026年分と2027年分(令和8年・9年分)の2年間の特例とされています。年収がこれより多い人や、給与以外の収入がある人は、目安がそのまま当てはまらない点にも注意が必要です。また、これは所得税の話で、住民税は税金がかかり始める基準が少し異なります。

注意したいのは、ここまでの数字は「所得税」の基準だという点です。社会保険は別の制度で、勤務時間・勤務先の規模・学生かどうかなどで判定されます。いわゆる「106万円の壁」は、短時間で働く本人が社会保険に入るかどうかの基準ですが、学生は原則として対象外です(休学中や夜間・通信制などは例外)。なお、月8万8千円以上という賃金の基準は、2026年10月に撤廃される予定です。一方、健康保険の扶養に入れる収入の目安は通常130万円未満ですが、19歳以上23歳未満の人(配偶者を除く)は、2025年10月から150万円未満に緩和されました。

「扶養に入れる」基準は、また別の数字

まぎらわしいのが、「本人に所得税がかかるか」と「親や配偶者の扶養に入れるか」は、別の基準だという点です。

親などの扶養(扶養親族)に入れるかどうかは、給与だけの場合、その人の年収が2025年で123万円、2026年で136万円までが目安です。本人の所得税の壁(2026年で約178万円)とは数字が違うので、混同しないようにしましょう。なお、配偶者の場合は、この目安を超えても「配偶者特別控除」があり、もう少し高い年収まで控除が段階的に続きます(本人の所得などの条件があります)。

大学生年代の子がいる家庭の「壁」

もう1つの変更が、2025年に新しくできた「特定親族特別控除」です。対象は、生計を同じくする19歳以上23歳未満(大学生の年代)の子などです。学生であること自体が条件ではなく、年齢などで判定します。

かつては、子の年収が103万円を超えると、親が受けられる控除(63万円)がなくなりました。いまは、子の年収がある程度増えても、親の控除が急にゼロにはならず、段階的に減る仕組みです。親が63万円の控除を満額で受けられる子の年収の上限は、2025年で150万円、2026年・2027年は159万円。これを超えても、2025年で188万円、2026年・2027年は197万円までは控除が少しずつ残ります。

控除が増えると、その分だけ税金の計算のもとになる金額(課税所得)が減り、納める所得税が軽くなります。これは、払いすぎた税金が戻ってくる「還付」とは別の考え方です。

わが家に当てはめて考える

まずは、次の問いを書き出してみてください。

  1. 家族の中に、パートやアルバイトで働く人はいますか。その年収は今、いくらくらいですか。
  2. 19歳〜22歳の子がいる場合、その年収は159万円・197万円という区切りに対して、どのあたりにありますか。
  3. 手取りが変わることで、来年の家計や働き方の計画に、見直す点はありますか。

まとめ ― 手取りを厚くする「税のルール」の見直し

今回の改正は、家計の手取りを少し厚くする方向の変更です。ただし、保険(リスクを他人に移す備え)や、手元資金をためること(リスクを自分で抱える備え)とは性質が違い、あくまで税金のルールの見直しです。両方を混同しないことが大切です。

石垣島や沖縄では、パートやアルバイトで家計を支えるご家庭も多いと感じます。壁の位置が変われば、働く時間をあえて抑える必要が減る場合もあります。まずは、自分の家の年収と新しい壁の位置を並べて確認することが、第一歩になります。

参考資料

・国税庁「令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A」(令和8年5月)
・国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」(特設ページ・令和8年4月)
・国税庁「令和7年度税制改正による基礎控除の見直し等関係Q&A」(令和7年5月)
・国税庁 タックスアンサー No.1177「特定親族特別控除」
・財務省「令和8年度税制改正」パンフレット
・日本年金機構「19歳以上23歳未満の方の被扶養者認定における年間収入要件が変わります」(令和7年)
・厚生労働省「社会保険の適用拡大」(令和7年度年金制度改正法・賃金要件の撤廃)

本記事は一般的な情報提供であり、個別の保険契約・税務判断・資金繰り・投資判断等を助言するものではありません。実際の判断は、自社の状況に応じて、保険会社・保険代理店・保険仲立人・税理士等の専門家にご相談ください。

当研究所では、初回のご相談を承っています。年収の壁と家計・働き方のことも、まずはお気軽にお声がけください。