建物を建てる費用は、この数年で大きく上がりました。じつは、昔決めた火災保険の金額のままだと、火事や災害のときに保険金が足りなくなることがあります。この記事では、その理由と、いま確認しておきたいポイントを、やさしく整理します。

なぜ「保険金が足りない」ことが起きるのか

建て直すのに必要なお金(再調達価額)は、建築費の上昇によって、以前より高くなっている建物があります。国土交通省が出す「公共工事設計労務単価」(工事の人件費の目安)は、令和8年3月から使う分で前の年より4.5%上がりました。これで14年連続の引き上げです。全国の平均は25,834円となり、はじめて2万5千円を超えました。資材の値段も高い状態が続いています。

一方で、火災保険の保険金額(保険で受け取れる上限の額)は、再調達価額や時価など、契約の商品・条件に応じた建物の評価額をもとに設定します。建て直しの費用が上がっても、保険金額を見直さなければ、以前設定した金額のままになっていることがあります。この「実際の価値より保険金額が低い状態」を、保険では一部保険(保険金額が建物の評価額に足りていない契約)と呼びます。

一部保険だと、保険金が減らされることがある

企業向けの火災保険でも、一部保険のときに「比例てん補」という仕組みが働くことがあります。これは、足りない割合に応じて保険金を減らして支払う、という考え方です。

たとえば、建て直しに1億円かかる建物に、5千万円しか保険をかけていないとします。このとき、部分的な損害でも、保険金がその割合に応じて減らされることがあります。全焼のときだけでなく、一部の損害でも影響が出るのがポイントです。

なお、契約の条件によっては、損害額をそのまま払う(実損てん補)タイプもあります。自分の契約がどちらのタイプかは、保険証券や、保険会社・代理店・保険仲立人(お客様の側に立って保険を手配する専門家)に確認するのが確実です。

保険は、リスクをお金の面で他の人に移す「リスク移転」の代表的な手立てです(リスクファイナンスの中心は、この「移転」と、手元資金などで自分で備える「保有」の二つ。「軽減」はリスクを小さくする別の分野です)。移転の効果を保つには、保険金額が今の実態に合っていることが前提になります。

石垣島・離島だからこそ、点検を

台風や塩害の多い離島では、建物の傷みや被害のリスクが本土より身近です。建て直しの費用も、資材や職人の手配で割高になりがちです。だからこそ、保険金額が今の建築費に見合っているかの確認は、島の事業者にとって特に大切です。値上げが続くいまは、更新のタイミングや、増改築・大規模改修をしたときに金額を点検する良い機会です。

自社で書き出してみる問い

  1. 自社の建物の火災保険は、いつ・いくらで保険金額を決めましたか。
  2. その金額は、今の建築費で「同じ建物を建て直せる額」になっていますか。
  3. 自社の契約は、比例てん補か、実損てん補か、確認しましたか。

まとめ

建築費が上がっているいま、保険金額の点検は後回しにしがちです。しかし、いざという時の差が大きい部分です。まずは、手元の保険証券を見返すことから始めてみてください。

参考資料

  • 国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」(令和8年2月17日発表)
  • 日本損害保険協会「損害保険Q&A(すまいの保険・火災保険)」

本記事は一般的な情報提供であり、個別の保険契約・税務判断・資金繰り・投資判断等を助言するものではありません。実際の判断は、自社の状況に応じて、保険会社・保険代理店・保険仲立人・税理士等の専門家にご相談ください。保険金額の設定や比例てん補の有無は、契約している商品や特約によって異なります。

保険金額の見直しや、自社のリスクへの備え方について気になる点があれば、初回のご相談を承っています。お気軽にお声がけください。