2026年4月、労働安全衛生法(職場の安全を守るための法律)の改正が施行されました。一人親方やフリーランスに仕事を頼む会社も、会社によっては、安全衛生上求められる対応の範囲が広がっています。この記事では、外注先がケガをしたときに出ていくお金の備えを、「保険で他に移す部分」と「自社で持つ部分」に分けて考える手順をまとめます。

2026年4月から、外注先の安全も視野に入った

改正法は2025年5月に成立し、同年5月14日に公布されました。施行は段階的で、この記事でまず取り上げる元方事業者等の措置対象の拡大は2026年4月1日から施行されています。

大きな変更は、建設業など、これまでも混在作業(同じ場所で複数の会社の作業が入り混じること)について元方事業者等に連絡調整などが求められてきた現場で、その措置の対象が「労働者」から、個人事業者を含む「作業従事者」へ広がったことです。こうした現場で一人親方が作業する場合には、その一人親方も連絡調整などの対象に入ります。

また、業種を問わず、危険・有害な作業が混在する場所で、その場所を管理する事業者に連絡調整などを求める仕組みは2027年4月1日からの施行です。自社の業種と時期を分けて見てください。

なお、健康診断については、この改正とは別に、厚生労働省「個人事業者等の健康管理に関するガイドライン」(2024年5月28日策定)で、注文者による情報提供や受診機会の提供などの自主的な取組が促されています。このガイドラインに基づく取組は法律上の義務ではありません。

さらに2027年1月1日からは、個人事業者等の業務上災害を報告する制度が始まります。個人事業者等が労働者と同じ場所での仕事に伴う事故などで亡くなるか4日以上休業した場合、原則として、その場所での直近上位の注文者が労働基準監督署へ報告します。直近上位の注文者がいない場合は、災害が起きた場所を管理する事業者が報告します。

義務が増えても、お金のリスクは残る

安全の体制づくりは、事故そのものを起こりにくくする手立てです。これはリスクコントロール(リスクを小さくする工夫)の領域にあたります。

一方、事故が起きた後に出ていくお金への備えが、リスクファイナンス(リスクへの財務的な備え)です。中心は二つあります。保険などで負担を他に移す「移転」と、手元資金などで自社が引き受ける「保有」です。実務では、この二つに軽減(リスクコントロール)を組み合わせます。

ここで気をつけたいのは、一人親方は原則として労災保険の対象外だという点です(希望すれば入れる特別加入の制度はあります)。治療費や休んでいる間の生活費が労災保険から出ないとき、注文者側に法的責任が認められる場合には、会社に損害賠償を求められることがあります。

そして、自社が入っている賠償責任保険が「誰のケガまで」を対象にしているかは、契約ごとに違います。自社の従業員だけなのか、外注先の人も含むのか。これは保険証券と約款(契約の細かいルールを書いた書面)を見ないと分かりません。

数字も一つ。厚生労働省の集計では、2025年(令和7年)の労働災害による死亡者は700人、休業4日以上の死傷者は135,333人でした。死亡者数は過去最少ですが、休業4日以上の死傷者数はほぼ横ばいです。

石垣島や沖縄の離島では、建設や設備の仕事を島内外の一人親方に頼む場面が少なくありません。島外から職人を呼ぶ現場も同じです。誰の現場で、誰が作業しているのか。一度書き出してみる価値があります。

自社で書き出してみる3つの問い

  1. 直近1年で、自社の現場や事業所で作業した外注先・一人親方は、何人いたか。
  2. その人がケガをしたとき、治療費と休業中の補償は、誰のどの制度・契約から出るのか。労災保険の特別加入をしているかどうかも確認できるか。
  3. 自社の賠償責任保険は、外注先の人のケガを対象にしているか。保険証券のどこで確認できるか。

まとめ

義務が広がったことは、裏を返せば、事故が起きたときに会社へ向く視線も広がったということです。安全の体制を整えながら、出ていくお金を「移転」と「保有」に分けて置き直す。その配分は、会社の規模や現場の数で変わります。

答えは会社ごとに違います。まずは上の3つの問いを紙に書き出すところから始めてください。

参考資料

  • 厚生労働省「労働安全衛生法及び作業環境測定法の改正について」(改正法は2025年5月14日公布、2026年4月1日一部施行)
  • 厚生労働省「令和7年の労働災害発生状況」(令和8年5月27日公表。死亡者700人、休業4日以上の死傷者135,333人)
  • 厚生労働省「労働安全衛生規則及び労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行規則の一部を改正する省令の施行について(個人事業者等の業務上災害の報告に係る規定関係)」(令和8年6月24日付け基発0624第5号。2027年1月1日施行)
  • 厚生労働省「個人事業者等の健康管理に関するガイドライン」(2024年5月28日策定、基発0528第1号)

本記事は一般的な情報提供であり、個別の保険契約・税務判断・資金繰り・投資判断等を助言するものではありません。実際の判断は、自社の状況に応じて、保険会社・保険代理店・保険仲立人・税理士等の専門家にご相談ください。安全衛生法令の具体的な対応は、社会保険労務士や所轄の労働基準監督署にもご確認ください。

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