「また火災保険の更新案内が来て、保険料が上がっていた」——そう感じる経営者は少なくありません。この記事で分かることは、次の3つです。① 火災保険料が上がる背景、② 事業用保険で見直すべきポイント、③ 保険料を下げるだけでなく、会社を止めないための考え方。

まず事実:火災保険を取り巻くコスト上昇は続いている

火災保険を取り巻く値上げ圧力は、住宅だけでなく、店舗・工場・事務所などの事業用保険にも及んでいます。たとえば、住宅総合保険の「参考純率」は、全国平均で2019年に4.9%、2021年に10.9%、2023年に13.0%と、段階的に引き上げられてきました。とくに2023年の13.0%は、住宅総合保険の参考純率としては過去最大の引き上げ幅でした。

ただし、これは住宅総合保険の参考純率であり、事業用火災保険の保険料改定率そのものではありません。参考純率は、各保険会社が使用を判断するための“目安”であって、実際の契約者の保険料とは異なります。多くの保険会社ではその後の火災保険改定に反映されていますが、実際の改定率や反映時期は、保険会社・商品・所在地・建物構造・補償内容によって異なります。とはいえ、自然災害の増加、建物の老朽化、修理費の高騰といった背景は、事業用の保険設計にも無関係ではありません。

また、一部の保険会社では、2026年10月以降を保険始期とする火災保険について、商品改定や保険料水準の見直しを案内しています。もっとも、改定の有無・対象商品・改定率は保険会社ごとに異なり、公表されているのは主に個人向けの火災保険です。事業用の保険については、更新案内や取扱保険会社の資料で個別に確認する必要があります。

もうひとつの変化:契約が「最長5年」に短くなった

以前は火災保険を最長10年でまとめて契約できましたが、参考純率を適用できる期間が最長5年に短縮され、その後、火災保険の長期契約は最長5年が一般的になりました。長期でまとめておけば、その間は料率改定の影響を受けにくくなります。一方で契約期間が短くなると、更新のたびに新しい(多くは高い)料率が反映されやすくなります。

立地でも変わる:水災料率の「5区分」

2023年の参考純率改定では、水災に関する料率が、市区町村別のリスクに応じて5区分へ細分化されました。公式資料では、火災・風災・雪災・水災などを含む補償危険全体で見た場合、最も高い地域と最も低い地域の較差は約1.2倍とされています(水災補償“単体”で1.2倍という意味ではありません)。実際の保険料への反映は、保険会社・商品・契約条件によって異なります。同じ規模の会社でも、事業所がどこにあるかで負担が変わり得る、ということです。

事業用火災保険の保険料を抑える5つの見直しポイント

火災保険は、リスクファイナンスでいう「移転(保険会社に肩代わりしてもらう)」の代表です。ただし、なんでも保険に移そうとするほど保険料は重くなります。次の5つを点検してみてください。

1. 補償の棚卸し

保険証券を出して、建物、設備・什器、商品・製品、休業損失、賠償責任など、「何に、いくらの補償を付けているか」を一覧化します。長年の重複した特約や、逆に足りない補償がないかを確認します。

2. 免責金額(自己負担額)の見直し

小さな損害まで全部保険で受けようとせず、「小さい損害は手元資金で受け、大きい損害だけ保険に移す」と割り切ると、保険料を下げやすくなります。ただし、免責金額は実際に払える範囲に設定することが前提です。

3. 契約期間・支払方法の確認

資金繰りが許せば、最長5年の長期契約や一括払いを検討します。長期契約中は次回更新まで料率改定の影響を受けにくい一方、補償内容を見直す機会が減ります。途中で事業内容や設備が変わった場合は、必ず内容を確認してください。

4. 所在地の水災リスク区分の確認

ハザードマップや保険会社の水災リスク区分を確認し、過不足のない水災補償にします。新規出店・移転の判断材料にもなります。

5. 減災投資と休業対策

止水板、設備のかさ上げ、重要データのクラウド化などは、直ちに保険料を下げるとは限りません。ただ、被害そのものを小さくし、保険では取り戻しにくい「休業損失」や顧客離れを防ぐ効果があります。保険料だけでなく、事業を止めないための投資として考えるとよいでしょう。

なお、保険料を下げるために必要な補償まで外してしまうのは本末転倒です。とくに、建物だけでなく、設備・什器、商品、休業損失、賠償責任のどこに空白があるかは、慎重に確認する必要があります。

沖縄・離島の経営者へ

沖縄・離島では、台風、高潮、停電、物流の遅れなど、本土とは違う形で事業が止まるリスクがあります。風水害補償の有無だけでなく、休業時の資金繰り、在庫、データ、従業員の出勤体制まで含めて考えることが重要です。

まとめ:保険料は「見直しの前提」で付き合う

火災保険のコスト上昇は、当面続く前提で考えるのが現実的です。更新のたびに証券を棚卸しし、免責・減災投資と組み合わせて、移転・保有・軽減のバランスを取り直す。まずは手元の保険証券を眺めるところから始めてみてください。「どこを削り、どこを厚くすべきか分からない」という方は、当研究所の初回相談もご活用ください。

参考資料

  • 損害保険料率算出機構「火災保険参考純率 改定のご案内」
  • 損害保険料率算出機構「水災料率の細分化について」
  • ソニー損害保険「火災保険 商品改定について(2026年10月1日以降始期)」
  • 損害保険ジャパン「火災保険改定のご案内」
  • 各保険会社の事業用火災保険・企業財産保険のパンフレット、重要事項説明書

本記事は一般的な情報提供であり、個別の保険契約・税務判断・資金繰り・投資判断等を助言するものではありません。実際の判断は、自社の状況に応じて、保険会社、保険代理店、保険仲立人、税理士等の専門家にご相談ください。当研究所でも、リスクの棚卸しに関する初回相談を承っています。